在ワシントン大使館巡り〔第10回〕
“Peace of Heaven on Earth !”
― アンティグア・バーブーダ大使館 ―


これから寒い季節を迎えるワシントンの皆様に、是非ともこの知られざる美しい常夏の国をご紹介したいと思い、今回は東カリブ海諸国の一つアンティグア・バーブーダの大使館にリオネル・ハースト大使をお訊ねしました。アンティグア・バーブーダについて大使は開口一番、”Peace of Heaven on Earth” と仰り、心はすでにその平和で美しい国に飛んでいるご様子でした。アンティグアとバーブーダはそれぞれ小さな島ですが、珊瑚礁に恵まれたあくまで青い海と、まばゆいばかりの白砂に囲まれています。海水浴、スキューバ・ダイビング、ゴルフ、船遊びに民俗行事と、この小さな国は欧米の金持ちを惹きつけて止みません。大使館は、アメリカン・ユニバーシティに近いサットン・プレイスの前にある東カリブ諸国機構( OECS )の建物に同居していています。入り口は施錠もされておらず警備は一切無し、のめずらしい大使館です。

この国は、アメリカ大陸発見の翌年(1493年)にコロンブスにより発見され、1667年に英国の植民地となりました。長いことサトウキビの栽培で栄え、その労働に従事するためアフリカの黒人が奴隷としてつれてこられましたが、1834年、ウイリアム王の治世に奴隷解放が行われました。住民の8割以上がそうした黒人の子孫です。この国から来た人々は、概して礼儀正しく非常に物腰が柔らかです。1981年に独立を果たしましたが今でも立憲君主制を取っており英国女王エリザベス2世を元首に仰いでいます。面積は442平方キロメートルで種子島よりやや大きく人口は約700万人です。

アンティグア・バーブーダは「地上における天国の平和」

この国はまさに地上の楽園で、空から眺める島の姿は格別です。高い山は無く、ギザギザの海岸線に沿ってココナッツの木が映える白い砂浜が続きます。常に柔らかい風が吹いており、ヨット、魚釣りそしてヌード・ビーチでの日光浴等が楽しめます。珊瑚礁が美しく、スキューバ・ダイビングの為に訪れる人も沢山います。36ホールのゴルフ・コース等ゴルフ場も数カ所ありますし、博物館やカジノも楽しめます。

ダイアナ妃は生前バーブーダ島がご贔屓でした。そこには一泊1500ドル以上の高級ホテルがあります。自前の空港を持ち、自家発電設備もありいわば自給自足のホテルです。昨年初めてヨーロッパからの観光客の数がアメリカを抜きました。アメリカ資本の立派なホテルも多くあり富裕な観光客が多いのですが、パッケージ・ツアーならそう高くはありません。フランスやイタリア料理などの高級レストランも沢山あり、日本料理店も一軒あります。

観光シーズンは12月から4月までで、毎年人口の4ー5倍位の観光客が訪れます。ワシントン・ダレス空港からの直行便がなくなったのが残念ですが、マイアミ経由のアメリカン航空の便があります。

環境保全に留意しつつ港を整備したのでマイアミからのクルーズ客船も寄航出来るようになりました。小さな島ですからレンターカー又はタクシーで容易に回れます(但し左側通行)。治安は良くアンティグアの町を歩くのはホワイトハウスの周りを歩く位安全です。

政治、産業と経済

この国はいわばアメリカとは夫婦、イギリスとは主従の関係にあります。元首はエリザベス女王ですが、女王は代理人を置くのみでレスター・ブライアントー・バード首相が事実上この国を治めています。法律は二院制の議会で成立し、クイーンの同意を得て施行されます。駐米大使は首相が任命しますが、只大統領に差し出す信任状はクイーン名でなければなりません。

サトウキビの栽培は1972年で完全に終わりました。生産コストがトン当たり10ドル、売値が8ドルではとても採算に合わなくなり、砂糖工場は解体売却されました。その後は観光資源を活かす道を選びました。海辺で魚は釣れますが、基本的に食料はすべて輸入に頼っています。しかしモラセス(糖蜜)を輸入して作っているラム酒は有名です。

その他この国の経済を支えているビジネスとしてオフショア・バンキングがあります。又税金も非常に低くこの国で国際企業を設立するのはわずか300ドルですみます。その他インターネット・賭博、自動車レースなどがあります。

識字率は100%

国連が Human Development の観点から世界の188カ国のランク付けを行っていますが、アンティグア・バーブーダは独立後わずか20年の極小国ながら20位に食い込んでいます。乳幼児の死亡率はニューヨーク市のそれよりも低く、国民の識字率は100%に達しています。1940年には半分が文盲だったことを考えると大変な進歩です。私共は小・中等教育に大変力を注いでいます。軍人が150人、警官が450人しかいないのに、学校の先生は2000人もいる事からもお解りでしょう。学校建設はカナダの経済援助によるものです。

残念ながらアンティグアには大学は無く、カリブ諸国の英語圏で大学が一つあるのみ(18,000座席)です。従って多くの学生がアメリカに留学します。この国からは作家として有名な ジャマイカ・キンケイド等多くの人材を生んでいますし、コメディアンのバート・ウイリアムスとか、その他連邦判事、弁護士等としてアメリカで活躍している人も多くいます。

祖先はアフリカから来ているのでアフリカの言葉、習慣、リズムなど過去のものが何らかの形で残っています。音楽とダンスはカリプソです。その他リンボ・ダンスも盛んです。シドニーのオリンピックにも棒高跳び、陸上競技種目に20名の選手団を送りました。とれるメダルの数は確実にゼロですが。 島では例えばテニス・ウイーク、国際クリケット大会等毎月何かの行事が行われます。4月末に開催されるセイリング・ウイークには世界中からセール・ボートが集まります。7月は奴隷解放記念のカーニバルが行われ11月1日には独立記念日のパレードがあります。

捕鯨問題では日本と同じ考え方

先日の国連のミレニアム・サミットにはバード首相が出席し、日本の農林水産大臣と会談しました。捕鯨に関しては日本と同じ意見で、私共は南カリブ海に於けるある種の捕鯨は問題ないと考えています。

日本とは正式な外交関係がありますが、名誉領事館を置くのみで未だ中日大使館は設置しておりません。主として経済的理由によるものです。いずれ例えばOECS のような共同設備を利用して設置したいと考えています(註:日本は在トリニダッド・ドバゴ大使がアンティグア・バーブーダを兼轄)。日本からも経済援助を頂いており、そのお陰で500万ドルかけて鮮魚の貯蔵施設を作り又新しい市場も建設しました。

日本の旅行者にはビザは不要です。現在12人ぐらいの宗教関係の日本人のグループが滞在し、日本語や日本の文化などを教えています。

大使は単身赴任

現在家族はアンティグアに残しており、月に一度帰国します。ワイフがキャリアの銀行家なのですが、ワシントンに赴任して一旦その職を離れると再復帰が非常に難しいという事情によります。何度か結婚したので子供は沢山おり、アメリカ生まれでこちらに住んでいる子もいます。祖先を同じくしてもアメリカでは人の気風が少し異なるようです。アンティグアの人がおっとりしているのは小さな町、小さな国の故でしょう。

日本商工会の皆様、是非アンティグア・バーベーダをお訊ね下さい。一度いらしたら病みつきになること請け合いです。ニューヨークには観光局もあります。 帰りは大使の公用車でお送り下さり恐縮しました。尚 アンティグアのホームページはhttp://www.interknowledge.com/antigua-barbuda 、ニューヨーク観光局の電話番号は 212-541-4117 です。