『バルセロナと比べたワシントンの印象』


松下電器産業株式会社 野西正一

ワシントンに参りまして半年近くになります。まだ極短い期間なのですが、10年ほど前に住んでいましたスペインのバルセロナと比べてその印象などについてお話しさせて頂きます。

ワシントンに赴任が決まりました時には先進国に行ける、それも超大国アメリカの首都だと若干興奮気味でした。著名な政治家や知識人が集まっている一流の中の一流の街だという認識でした。事実そうだと思います。ただここまで強く先入観を感じましたのは、これまでの仕事に理由があります。入社してから大体が輸出や海外事業の仕事でした。担当地域はブラジル、メキシコはじめラテンアメリカそれに、ロシアや中近東です。先進国ではなく中進国と途上国ですね。そこでワシントンと来ましたから少し舞い上がってしまったような次第です。

ブラジル、メキシコといったラテンアメリカの担当が長いのですが、日本から家族と一緒に出向という形で出ましたのはスペインのバルセロナです。出向期間は3年ほどであまり長くはありませんが双子の子供が生まれてすぐでしたので印象が強く残っているのだと思います。

バルセロナの印象で最初に浮かんできますのは澄み切った青空です。雲一つありません。年間を通じて天候が良くほとんどが晴天だったように思います。気温は日本ほど暑くもならず、寒くもならない、湿気がなく乾燥していて過ごしやすいところです。人によってはエアコンをつけていませんでした。住んでいましたのは都心から少し離れた住宅地のアパートです。アパートといいましても結構広く部屋の中を子供が三輪車を乗り回していたぐらいです。バルセロナは港町で都心から車で15分くらい走りますと海岸に出ます。古い町並みと新しい町並みに分かれており古い方にはゴッシク調の協会や市庁舎があり新しい方には近代的なホテルが建っています。渋いレストランや居酒屋は古いほうにあり日本でも最近よくメニューに出てくるパェヤやタパスといいましてイワシのフライ、イカリング、小エビをニンニクオイルで炒めたお酒のつまみになりそうな小皿がなかなかいいです。海産物が美味しいですね。スペイン人は食事を非常に大切にしています。1日きっちり食事をしますと5回になります。先ず、朝起きてミルクコーヒー(カフェ・コン・レチェ)、10時頃簡単なサンドイッチのような軽食、午後3時頃に1日のメインの食事である昼食、夕方6時頃におやつのようなものそれから午後10時頃に夕食です。ただ今はきっちり5回食事を取るのは少なくなっているようです。昼食には仕事が午後からあっても大抵ワインやビールを飲みます。水のような感覚ですね。

バルセロナの人についてですが、バルセロナはカタルーニャ地方の州都でここの人達はカタランと呼ばれており言葉も所謂、マドリードを中心に話されスペインの公用語になっているエスパニョール或いはカステヤノとは違います。彼ら同士の間ではカタランで話し新聞もカタランのものを読みます。スペインは元々都市国家だったカスティリヤ、ガリシア、カタルーニャ、アンダルシアの地方に別れ言葉もそれぞれ異なります。各土地とも独立心が強く誇り高い人達です。ただスペイン人は全般的に愛想がよく子供が好きで大概のレストランでは子供を連れて行っても嫌がられたことはありせん。エレベーターの中でも歯医者で順番を待っていてもオラとお互いに声をかけ挨拶をします。

10年前の記憶をたどっていくと懐かしい楽しい思い出ばかりでてきます。翻ってワシントンの印象ですが、まだ冬しか経験しておらず春や夏はこれからです。今年は雪も少なく暖冬で運が良かったと言われました。暖かくなったと思ったら急に寒くなって変動が激しいですね。食事はパワーランチとかお付き合いがない時はサンドイッチとか簡単に、質素に済ませられているように感じました。ダイエットが流行しているせいもあるかもしれませんが野菜とかあまり食べずにサプリメントをたくさん摂るという、これも生産性が高いというのでしょうか。フィットネスクラブが多くジョギングしている人をよく見かけます。自己管理に気を遣うのでしょうか。ワシントンの人はスペイン人ほど愛想がよくないようでエレベーターとかでもあまり声をかけませんね。

ワシントンで最も強い印象は世界各国から人が集まっているということです。タクシーに乗りますとアフリカ、中南米、中近東、アジアの国出身の運転手がそれぞれ自国の言葉で携帯電話で話しているのを聞いて奇妙な感じがしました。子供が通っているパブリックスクールは70カ国の子供たちが勉強しているそうです。世界中から人が集まって来るため様々なところで管理されルールがありセキュリティーチェックは厳しく大らかな自由の国というイメージがなくなってしまったようです。空港でバンドをはずして靴まで脱がされて身体検査を受けるのは到底友好的と言えません。9.11以降生活がかなりしにくくなったと伺っています。

まだ生活に慣れないせいか厳しいイメージばかりなんですが、いいところはワシントンの街は当初、想像していたよりこじんまりして高層ビルもなく、街中は歩いて移動できる、車で走るとすぐ郊外に出て木が多くリスもいる、当初、抱いていたエリートの集まる生産性の高い隙のないところではなく親しみが持てる案外、居心地はいいところだなと思っています。日本についての認識は深いですね。仕事がら正に日本の専門家とお話しする機会があり政治や経済情勢、日本を取り巻く国際環境を的確にそれも流暢な日本語で説明されたりして驚きました。それから商工会やメーカー会とか日本人の間のつながりが緊密で所属や業種の違う皆様とも親しくお付き合いさせて頂いているのでとても心強く有り難いです。

古い歴史があり人を受け入れる優しさのあるバルセロナと歴史は新しいが知的で世界中の文化が混じりあうワシントン。ワシントンにはこれからお世話になりますがいい所を捕らえて生活をエンジョイしていきたいと考えています。

以 上