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![]() ![]() 『13年ぶりのワシントン』
在米国日本大使館 公使 五嶋 賢二(ごとうけんじ)
「この町にもう一度住むことはないだろうな。」と思いながら、3年間暮らしたチェビー・チェイスのアパートの鍵を大家さんに返したのが13年前の春でした。それがこの間から、かつてと同じケンウッド近くのジャイアントでガロンの水を買い、Whole Foodsと名前を変えた店(当時はFresh Fieldsでした)でスモークサーモンやチーズを買う生活に入ったのが、まだピンと来ていないというのが正直な気持ちです。この間、通産省・経済産業省の職員として、それから出向していた独立行政法人日本貿易保険の職員として、度々ワシントンに出張する機会はありましたが、やはり「旅人」として立ち寄るのと「住人」となるのとでは、ワシントンとその周辺を見る目も大違いで、この十数年間の時の流れの速さと、その間のワシントンの変化や日米の関係の違いが目についています。以下、そのうちのいくつかを紹介します。 (変わったこと) 先ずは、車の量が圧倒的に増えたこと。朝のリバーロードがのろのろなのはびっくりでした。さらに昼間のダウンタウンでは駐車場探しが大変というのにも驚きました。聞くところではワシントン及びその周辺が、政治だけでなくハイテクの街になって人口増になり、雇用も増えて車通勤者が増えたためとのことですが、少なくとも当時メリーランド側では通勤時の交通渋滞は「あり得ないこと」だったので本当に隔世の感があります。 それから、物価が高くなったこと。90年第前半は日本からの赴任者にとって米国はなんでも物価が安いところでした。それが今回は、ほとんどのものが日本と同じか日本より高い!当初は為替の関係かと思いましたが(1993年夏に初めて1ドル100円を切った日のことを今でもよく覚えています)、円ドルレートだけを見れば実は当時と今とで圧倒的な違いがあるわけではありません。むしろこの間に、米国側のモノ・サービスの値段が上がった、さらに言えば、日本でデフレが進行する一方で、米国では生産性が向上し所得水準も上がったことが主因なのでしょうか。為替を物価で調整しさらに貿易量で加重平均した「実質実効為替レート」で比較すると、今年1月の円は1985年のプラザ合意以来約20年ぶりの低水準というデータもあります。 さらに、当時と比べてアメリカ人が自信に満ちているように感じられること。かつては値段も安い代わりに、対応も粗雑・いい加減でしたね。最近赴任された方は意外に思われるかもしれませんが、私の印象では、総じてサービスのレベルが良くなっています。着任早々借りたレンタカーにうっかり置き忘れたガレージ・オープナーも、ちゃんと手元に返ってきました。これは当時は決して期待できないことだったので感激でした。(もちろん、これはプライベートでの経験と印象論です。仕事のカウンターパートは、当時も今もしっかりした人たちばかりですので、念のため。) そして、私自身の仕事が、「通商摩擦対応型」から「協力関係維持発展型」に大きくシフトしたこと。 米国がずいぶん変わったなあ、と思うことはまだまだあります。例えば、英語/スペイン語の併記というのは当時予想もしませんでした。あまりたくさんあるのでこのくらいにしておきます。 (変わっていないこと) 当たり前かもしれませんが、ホワイトハウス、議会、ワシントン・リンカーンのメモリアルといった、街の基本構造は変わっておらずホッとしています。むしろ、臨海部と六本木周辺を中心とした東京の変化の方が大きいと思います。 もう一つ。大使館内の職員の机の配置は、各省出向者の座る順番を含めて、私が経済班の書記官で着任した当時とほとんど変わっていません。 (大統領選について) 書記官で赴任した当時は、ちょうど湾岸戦争終結直後で、ワシントンでは「戦勝花火大会」が独立記念日と同じくらい派手に行われ、ブッシュ父大統領(George H.W. Bush)の人気は絶好調でした。まさかその1年半後の1994年大統領選で、圧倒的に強いといわれていたブッシュ(父)が新人のクリントン(夫)に負け、翌年1月、日本から参加された国会議員のお世話のために仕事として出席した大統領就任パーティーで新大統領を真近で見ることになるとは、その時点では全く想像できませんでした。 偶然にも、今回の私の赴任のタイミングは、大統領選の約1年半前という意味で前回と同じです。どうしても大統領選の行方に関心が向かいます。イラクの戦争、ブッシュ、クリントン、等々のキーワードは似ていても、当時とは事情が全く異なる。今回は共和党対民主党、さらには民主党内の有力候補者という点ですでにほぼ決着済みのような雰囲気ですが、当時の経験からすると、これから何が起きるか正直言ってまだわかりません。来年11月に向けて、注目を続けようと思っています。 以上、日本はバブルの余韻さめやらず日米通商摩擦も激しかった時代、父ブッシュと夫クリントンが争った時代を基点に置いて定点観測をすると、今のワシントンがどう見えるかをいくつか述べてみました。何かの参考になれば幸いです。 |