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![]() ![]() 『今月の書評』
池原麻里子
『フリーコノミクス』ポトマック・アソシエーツ スティーブン・D・レヴィット&スティーブン・J・ダブナー著(ハーパー・コリンズ社) 書名『フリーコノミクス』は「フリーク」(風変わりな)と「エコノミクス」(経済学)を組み合わせた造語である。副題には『ぺてん経済学者が万事の隠れた意味を探る』とある。 この副題通り、この本は通常の経済学書ではなく、「道徳が社会の理想像なら、経済は実像」を前提に、いわゆる社会常識を統計的に分析することによって、真実を見極めることを試みている。 著者スティーブン・レヴィットはシカゴ大学の若手新進気鋭の経済学者で、全米で40歳以下の最も優秀な経済学者に与えられる賞を受賞したばかりだ。二十六歳でMITで博士号を取得した後、アマルティア・センやロバート・ノジックといった有名な学者たちの面接に合格し、ハーバードから3年の研究費を得ている。共著者ダブナーはニューヨーク・タイムズなどに寄稿しているジャーナリストで、レヴィットの分析をニューヨーク・タイムズ・サンデー・マガジンに連載している。 『フリーコノミクス』は2005年4月に初版が出た後、増刷を続け、昨年10月にアップデート版が出版された。何と90週連続でニューヨーク・タイムズ・ベストセラー・リストに載っている。これはトーマス・フリードマンの人気作『フラット化する世界』の95週連続に続くヒットで、経済学書には珍しい。 内容的には社会学的、心理学、雑学的な面が多く、経済は不得手の私でも興味深く、楽しく読めた。例えば何故、アメリカの犯罪率は90年代から激減し始めたのか。多くの学者たちが90年代の好景気、銃取締り強化、警官増員等が原因だと主張してきたし、私もそれはごもっともと納得していた。しかし、レヴィットはそうではないことを統計から証明し、実は1973年の最高裁判決で中絶が認められるようになったことに起因していると指摘している。「望まれずに生まれた子供は犯罪に走る。中絶は望まれない子供の数を減らす。従って中絶によって犯罪率は下がる。」というのだ。 日本関係では最近、再びニュースとなっている相撲の八百長が例として挙げられている。七勝七敗の力士が八勝六敗の力士に勝つ可能性が48.7%であるのに対して、実際は79.6%勝っていること、九勝五敗の力士に対しては47.2%の可能性に対して、実は73.4%勝っていることから、相互互助関係が成立しているとレヴィットは指摘している。 年々、増える一方の選挙資金については、選挙専門家たちからは反論が起きそうだが、大胆にも「選挙費は結果を左右しない」と証明している。1972年以後、同じ連邦下院議員候補同士が連続して争ったケースほぼ千件を分析した結果、当選候補は、選挙費用を半減しても、1%の支持しか失わないが、落選候補は選挙費用を倍増しても、1%の支持しか得ることができないことが判明したのだ。つまり候補は中身次第で、選挙費用はあまり関係ないというのだ。 90年代末に健康保険や自動車保険は変わりないのに、定期保険の掛け金だけが大幅に下がったという。その理由はインターネットの誕生によって、1996年に数十社の定期保険の比較が簡単にできるようになったことが原因だった。他の保険と異なり、定期保険は例えば30年満期で100万ドルというように型が決まっているのでどれがお得か判断し易いのだ。その結果、競争が激化し、全米で定期保険の年間支払い金額は10億ドル減ったという。 CIAはデータ分析によるマネー・ロンダリング犯人やテロリスト逮捕方法を考え出すことをレヴィットに期待しているそうだ。彼の『フリーコノミクス』にご関心ある方はhttp://www.freakonomics.comをチェックされるとよいだろう。最新のブログなどが読める。 (NEW LEADER 2007年3月号より転載) ![]() |