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![]() ![]() 『秋も深まるころ』
在米日本国大使館 一方井絢子
オーケストラが好きで、DCでも始めている。バイオリンを弾いている。仕事の傍らなので、これまで職場ではひっそりしていたのだが、今回せっかくこのような原稿依頼をいただいたこともあり、この場をお借りして大々的に宣伝させていただこう。東京にも社会人オーケストラは無数にあるが、DCでも、アマチュア・オーケストラの活動は盛んだ。例えば、国立研究所の有志が集まったオーケストラ、古くは奥様方の音楽サークルから始まったメリーランド拠点のオーケストラ、ロシア音楽専門のオーケストラ、その他様々なコミュニティー・オーケストラなど、探せば簡単にみつかる。私は、このうち、メリーランド拠点のオーケストラと、研究所のオーケストラに入れてもらっている。 そもそも、DCでオーケストラに入ろうと思った最初のきっかけは、単身で赴任したこともあり、1人の週末が暇でしょうがなかったからである。というのも、東京の社会人オーケストラの殆どは週末に練習している。平日夜に練習を設定しても、仕事の都合で人が集まらず練習にならないからであろう。土日の練習後の飲み会が楽しみな面もある。ところが、残念なことに、DCではいくら探しても週末に練習をしている社会人オーケストラがみつからなかった。土日はあくまでも「休み」であり、練習に費やすなんてとんでもないという感覚なのだろうか。それでも、平日夜7時半からの練習にみんな余裕を持ってちゃんと集まってくる。すばらしい。仕事のメリハリの問題だろう。結局、それほど要領のよくない私は平日だけ忙しい生活のままである。 初めてこちらのオーケストラの練習に参加した際、全く違和感がないことに驚いた。オーケストラのメンバーの雰囲気が、東京のオーケストラとそっくりなのだ。少しシャイな感じでまじめそうな弦楽器の男性陣や、なんとなく自由人ぽい管楽器奏者など、オーケストラをする人達って日米共通だろうか。みんなとても良い人ばかりで、いきなり入ってきた日本人の私も優しく歓迎してくれた。 アメリカならではのこともある。アマチュアのオーケストラも、コンサートを目指して練習を重ねるのだが、コンサートが終わった瞬間、決まって「ブラボー!」の掛け声とともに観客のみなさんがスタンディング・オベーションなのだ。スタンディング・オベーションなんて、DCに来るまで体験したことがなかった。乗りのよいアメリカ人こそである。うれしくなってしまう。 また、コンサートの会場は、東京のアマオケのように区民ホール等を借りるのではなく、週末に近くの教会を借りて行うのが大半である。聖歌隊が多いからか、合唱付の曲目を演奏する機会も多い。来年には、ベートーベンの第九も控えている。暖かい雰囲気の教会で第九を演奏できるなんて、今からどうなるか楽しみである。 DCという土地柄か、私のように期限付きで赴任しているメンバーも多く、コンサートが終わると、「次も演奏できる?じゃぁまた会えるね」という会話が繰り返される。同じメンバーで二度と演奏できないのは寂しいものがあるが、DCならではだろう。それだけ一回の演奏会が貴重に思えてくる。 オーケストラをやめられない理由は、演奏中に背筋がぞくっとする瞬間があるからだ(怖いからではない)。メロディーと響きが重なった瞬間であり、1人で弾いているのでは得られない感動である。こうした感動が、弾き手だけではなく、聴きに来て頂いた観客の皆様にも伝わるかどうかがプロとアマの差なのだろう。日々鍛錬です。 秋も深まるころ、もしも休日お暇なひと時があったら、ぜひオーケストラの演奏会に足をお運びください。 ![]() |