![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() ![]() 『今月の書評』
池原麻里子
『オイル・オン・ザ・ブレイン』ポトマック・アソシエーツ リサ・マーゴネリ著(ダブルデイ社) 本書は、ダニエル・ヤーギンの名著『石油の世紀―支配者たちの興亡』(1991年)にとって代わる名著と言われている。マーゴネリはエネルギーや産業と政策の個人への影響を専門とするジャーナリストである。 ちょっと変わった題はペンシルバニア州で1859年に起きたオイル・フィーバーの歌の題名だ。副題は『ガソリンスタンドからパイプラインまでの冒険』で、著者は地元カリフォルニアのガソリンスタンド、石油流通業者、石油精製所、テキサスの原油発掘所、石油戦略備蓄所、ニューヨーク・マーカンタイル商品取引所、そして産油国であるヴェネズエラ、チャド、イラン、ナイジェリア、今後、世界最大の石油消費国になる中国を訪問した。 私自身、日ごろ、ワシントン周辺のガソリンの価格変動や、出張先のガソリン価格の格差(例えばカリフォルニアは高いが、テキサスは安い)は目についていた。また石油にまつわるジオポリティックスも興味深く思っていた。かといって日々、1バレル幾らになった、その原因は何だと注意を払うほど関心はない。因みに私の住むワシントン市内にはメジャー系、独立系以外にもヴェネズエラのCITGO、ロシアのLUKOILのスタンドも存在し、メジャー系より安めだ。 著者が訪問した産油国の内乱、一般市民のみじめな生活など断片的に新聞、雑誌で目にしてきたニュースをまとめて読むことで、オイル・ポリティックスへの理解が深まった。チャベス大統領支配下のヴェネズエラが中南米諸国を石油を通じ、ネオレフト思想で反米勢力として団結し、米国防総省が同国侵攻計画を練っていること。世界でももっとも貧しいチャドを石油で発展させようとしたエクソンと世界銀行の計画の挫折などなど。 ここで本書から幾つかの数字や事実を紹介したい。米国のドライバーは日々、全世界の原油の1/9を購入している。ドライバーの3分の1が車内で飲み食いするので、スーパーサイズのドリンク・ホルダーが重要になる。 石油戦略備蓄所はテキサス州とルイジアナ州4ヶ所あり、7億バレル(2ヶ月分)を貯蔵している。テキサス州ブライアン・マウンドの年間貯蔵費は1バレル20セントで、日本は10ドル。1973年の石油禁輸対策として作られたこの備蓄所、実は戦略的政策もなく、ちゃんと機能していない。ガルフ・コーストに集中しているのも弱点だ。 ヴェネズエラは産油70%を対米輸出している。2004年の国営石油会社の収入は420億ドル、これに対して国家予算は260億ドルで、まるで国家が石油会社の子会社のような立場にある。国家予算の半分、GDPの1/3が石油収入だ。 チャドの国民年間所得は170ドル。エクソンと世銀によるアレンジによるチャドの石油ロイヤルティーは28%。アンゴラの60%、ナイジェリアの80%よりずっと少ない。世銀のセーフガード下にあるのは10億バレルで、残りは中国や台湾の国営石油企業等に行く。なお米国の対アフリカ投資の2/3がエネルギー部門で、サウジアラビアより西アフリカからの石油輸入量の方が多い。 湾岸地域における米軍は1988年以後、増強する一方で、コストは1990年代は年間500億ドル、2005年にはイラク占領を含め1320億ドルとなった。これは輸入原油1ガロン当たり5ドルに相当する。 なお、多少ガソリン価格が上昇しても消費量は減らないが、50マイルに最高速度を制限し、カープールやテレコミューティングを奨励し、タイヤにちゃんと空気を入れることで、日々、200万バレル節約できるそうだ。 (NEW LEADER 2007年6月号より転載) ![]() |