![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() ![]() 『今月の書評』
池原麻里子
『新世紀のリベラリズム』ポトマック・アソシエーツ ニール・ジュモンヴィル&ケヴィン・マトソン編集(カリフォルニア大学出版) 本書は十三名の著者によるリベラリズム論である。「哲学」、「アメリカの価値観」、「アメリカの国力」という三章に、アラン・ブリンクリー・コロンビア大学教授、アラン・ウルフ・ボストン大学教授など、主に学者によるエッセイが並んでいる。 ブッシュ大統領の不支持率の上昇、現在は多少、安定したがイラク戦争の混迷による「ネオコン」の凋落ぶり、二〇〇六年中間選挙での共和党の惨敗、そして共和党大統領予備選挙でジョン・マッケイン上院議員が任命を獲得しつつあり、確かに共和党保守は一時の勢いを失っているように見える。 前号で紹介したジョン・ボルトン元国連大使は『降伏という選択肢はない』と息をまき、「悪の枢軸」で有名になったブッシュ大統領の元スピーチライター、デイヴィッド・フラムは『カムバック:再び勝てる保守主義』という新書を出し、保守の復活を狙っているようだ。 が、そのフラムでさえ、「保守主義台頭は終焉を迎えつつある。」と指摘する。これはスーパーチュースデーまでの予備選挙で、民主党候補支持者が共和党のそれに比べ、数百万人多かったこと、従来共和党に有利だった税制、倫理、統治能力といった分野でさえ、国民が民主党を支持していることを踏まえての発言だ。そして、フラムはよりリベラルなイデオロギーへの変化が起きつつあると警告している。すると、この本はタイムリーなのかもしれない。 私が渡米したのは八八年夏、丁度ジョージ・ブッシュ副大統領とマイケル・デュカキス・マサチューセッツ州知事が大統領選挙で戦っている最中だった。デュカキスが「ACLU(米市民的人権連合)のメンバーである」と宣言したことが、ブッシュから「主流から外れている」と攻撃される材料になった。何故、ACLUのメンバーであること、リベラルであることが攻撃材料になるのか理解できなかった。 今年の大統領選挙予備選でも、共和党候補たちが保守ぶりを競っている。一方、民主党側はリベラルと呼ばれることを嫌い、「プログレッシブ」という言葉を使う。どうも「リベラル」とレッテルを貼られると、政治家にとっては大変に不利になるようなのだ。保守は英雄視している思想家アダム・スミスやフリードリッヒ・フォン・ハイエクの肖像画付ネクタイを着用することはあっても、リベラルには同様の行為は考えられないとブルッキングス研究所のE.J.ディオンは序文で指摘する。(そもそもネクタイを着用しないタイプが多い。) ニューディール、公民権活動などリベラリズムの功績だが、六五年にピークに達した後、その傲慢さによって保守の台頭を招き、この四十年間、分裂と凋落の道を辿ってきた。同様に保守の傲慢さの結果、リベラル復活のチャンスがやってきたそうだ。確かに今年の大統領選挙で、民主党は珍しく一致団結しているように見える。実際、ヒラリー・クリントンとバラク・オバマの支持者間の相違点は、イデオロギーというより世代、性別などだ。 しかし、外交政策面におけるリベラルのタカ派とハト派の亀裂は深刻なままだ。タカ派のオルブライト元国務長官、ホルブルック元国連大使などは当初、イラク戦争を支持していた。これに対して、いかなる場合も武力行使は正当化されないという立場のハト派がいる。リベラル思想誌「アメリカン・プロスペクト」の編集者マイケル・トマスキーは、両者が団結するためには、以下に合意せよと提案している―イラク戦争は大失敗だったが、将来的によい結果をもたらすかもしれない。全体主義や原理主義、テロに対しては同盟国と協調し、現実的に対応すること。コソボのような小規模な人権保護を目的とした介入は継続すること。侵攻しなくても、世界改善のためにできることが沢山あること。本当にリベラルは亀裂を乗り越え、イラク戦争後の新外交政策を展開することになるだろうか。 (NEW LEADER 2008年2月号より転載) ![]() |