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![]() ![]() 『今月の書評』
池原麻里子
『委員会』ポトマック・アソシエーツ フィリップ・シェノン(トウェルブ社) とにかく面白い。一章毎に舞台や主人公が変わり、まるでミステリー映画を観ているようだ。タイトルの『委員会』とは、米同時多発テロ独立調査委員会(いわゆる911委員会)を指す。シェノンはニューヨーク・タイムズのベテラン記者で、2003年1月の初会合から、2004年8月解散まで、同委員会を取材した。その後、本書のために委員や80人のスタッフの大半、調査対象者多数にインタビューしている。 私自身、委員会の報告書発表後、委員やスタッフ、委員会公聴会で初めて遺族に謝罪した政権高官として有名になったリチャード・クラーク、FBI職員、911の被害者や遺族、テロリストの弁護士等にインタビューしたことがあったので、報告書が完成するまでの裏話を描いた本書はとても興味深かった。911委員会報告書を読んだ方には、特にお勧めしたい。 著者は委員会とその報告書に関して極めて批判的だが、特に非難の的は同委員会エグゼキュティブ・ディレクターのフィリップ・ゼリコウである。ゼリコウはシェノンのインタビューは拒否したが、電子メールで応答しており、その153ページに及ぶやりとりはシェノンのウェブサイトに公開されている。(http://www.philipshenon.com/pdf/zelikowemail.pdf)。 ゼリコウはコンドリーザ・ライスと親しいため、彼女の国家安全保障問題担当大統領補佐官としての役割も調査する委員会トップ・スタッフとしての利害不一致が懸念された。トーマス・ケイン、リー・ハミルトン共同委員長がゼリコウを任命する過程で、ゼリコウが2001年初頭、ブッシュ政権移行チームのメンバーとして、NSCを担当し、テロ対策担当者リチャード・クラークとそのチームを格下げしたことや、2001年〜02年冬にブッシュ政権の「先制攻撃ドクトリン」のドラフトを担当したことを明らかにしていなかったと本書は指摘している。 ゼリコウがホワイトハウス、特にライスを庇っているように感じたスタッフは数多い。スタッフが調査必要と感じた資料を特定の政府機関に要請することを拒否したゼリコウと衝突し、辞任したスタッフもいる。ゼリコウはローブと連絡し、公聴会では先制攻撃論者やイラク・アルカイダ関係論者に証言させた。 委員や外部との接触は全て自分を通じて行うようスタッフに命じ、最終報告書のドラフトも編集し、委員会を完全にコントロールした。たとえばクリントン元大統領がアルカイダによるテロ行為を懸念する発言を多数行っていたのに対し、ブッシュ大統領が911前に触れなかったことをスタッフが記載したところ、ゼリコウは削除してしまった。スタッフは最終段階でゼリコウの目を逃れ、注意書きに復活させた。 ゼリコウ以外に興味深かったのが、各委員たちの思惑、行動である。ホワイトハウスに屹然と立ち向かったのは、ケイン共同委員長(共和)で、ワシントン・インサイダーのハミルトン共同委員長(民主)ではなかった。 911報告書でも明らかだったが、ブッシュ政権は政権交代時のクリントン政権からの忠告にもかかわらず、ライスを始め、アルカイダの脅威に無関心で、ミサイル防衛、イラク、イラン、北朝鮮を優先課題としていた。アッシュクロフト司法長官はアルカイダの脅威に関するブリーフィングを拒否し、NRA(全米ライフル協会)の手先として、身元チェックで銃購買が滞らないようにすることに熱心だった。ジュリアーニNY市長が1500万ドルかけて世界貿易センター第7ビルの23階に作った緊急対策センターは使いものにならなかった上、非常発電機のディーゼル油が火事の原因となった。CIAもFBIも911テロの犯人数人を追跡しておきながら、フォローしていない。本書を読み、911はもしかしたら防げたという感を再び抱いた。 本書はブッシュが再選され、ライスが国務長官に就任した直後、2005年2月にゼリコウを顧問に任命したところで終わっている。彼は2006年12月半ばまでこの職に就き、その後は古巣のバージニア大学に戻っている。 (NEW LEADER 2008年5月号より転載) ![]() |